RAH in PURspective
ロイヤル・アルバート・ホールを振り返って
1999年10月16日(土)
既に2週間程経ったので、そろそろ距離を置いてちゃんと判断できる頃だろう。ロイヤル・アルバート・ホールでの2回のコンサートは、ひと言で言って、「ものすごく、良かった!」(ひと言じゃなくてふた言だろうって? 分かってるけど、僕はしがないベーシストで、しかもウェ−ルズ人。他に表現の仕方を知らないんだから、ケチをつけないように。)あの二晩で僕達が味わうことの出来た感覚は、誰も事前に予期していないものだった。本当に嬉しかったよ。みんな本当にありがとう、どんなバンドもこれ以上忠実で頭のいいファンを願うことは出来ないだろう。あのステージに立って、あそこまでの歓迎を受けたのは、本当に忘れがたい経験だった。みんな愛しているよ、特に僕達のために労力を注ぎ込んで、ネットで作業をしてくれている君たち。
既に知っているように、僕はイアン・ペイス、スティーヴ・モース、ジョン・ロード そしてイアン・ギランのファンなんだけれど、全員が一流の演奏を出来たと思う。どのソロも素晴らしかった。実に久し振りにロニーと一緒に演奏できたのもすごく嬉しかった。そしてこのコンチェルトを作曲するだけのインスピレーションを持っていただけでなく、今回の公演前もすべてがスイスイ行くようにと数カ月間にわたって多大な時間を費やしてくれたジョンは、僕にとっても誇るべき奴だと伝えたい。よくやったぞ。
5日間にわたって行われたリハーサルも順調、みんな集中することが出来たし、笑いも、イライラも、思い出も、古き友人も、新しき友人も、ピザも、色々あった。我らの信頼すべきスタッフおよび、チームの無名のヒーロー達に称賛を。チャーリー・ルイスは特記に値する、プレッシャーの下でも優雅な、本当に偉大な奴。1971年からずっと僕達のツアーマネージャーをやってくれているコリン・ハートも、ストレスの続く中で本当にいい仕事をしてくれた。アリソン・ハッシーはかけがえのない存在だったし、サウンドと照明担当のモーレイとルイー、モニタ−担当のロブ、みんな素晴らしい活躍だった。スポットライトを浴びたのは僕達だったが、スタッフの全員(今回は参加しなかったが、過去数年ツアーで一緒に仕事をしてくれてきていたみんなも含めて)も皆さんの喝采を浴びるに値する連中だ。彼らや君たちが居てくれなかったら、僕達も今頃はまだどこかのリハーサル・ルームで練習をくりかえしているだけだっただろう。
このコンチェルトを30年ぶりにまた演奏するきっかけになった出来事について、先日僕達の事をあまりよく知らない人に話していたのだが、自分で話をしながら、なんて信じられないような物語なんだろうと、改めてびっくりしたものだ。1999年9月25・26両日の公演が実現するまでの展開や偶然の出来事は、まったく不思議なものだった。コンチェルトの楽譜が何年間も紛失されていて、そこへ2年もかけた労力と推理の結果、楽譜を一から書き直して再現したマルコ・デ・フーエイが、去年ロッテルダムでジョンに話しかけてきた。コリン・ハートの甥であるポール・マンは、子供の頃コンチェルトを聴きながら育ち、いつか指揮者になるのを夢見ていた。世界でも一番忙しいオーケストラの一つであるロンドン・シンフォニー・オーケストラが、たまたまこの週末だけスケジュールに空きがあったこと。同じく予約で一杯のロイヤル・アルバート・ホールも、たまたま週末空いていたということ。ロニー・ディオ、サム・ブラウン、ミラー・アンダーソン、グレアム・プレスケット、スティーヴ・モリス、エディー・ハーディン、デイヴ・ラルー、ヴァン・ロメイン、シンガーのみんな、キック・ホーンズのみんな、全員が当日都合がつき、無償で出演することに同意してくれたこと。そして今回のツアーを締めくくり、次のアルバムへと進むにあたって、何か特別なイベントを必要としていたディープ・パープル。求めずして運良く事が進むとは、こういう状況をいうのだろう。
僕のお気に入りの思い出話はといえば、ポ−ル・マンと何度か食事をした週があったのだが、ある晩パットニーでのリハーサルからの帰り道、グループのバンはガソリンスタンドに寄る。みんな疲れてお腹が空いていたのだが、僕が発見した、道の向かい側のレストランには誰も入りたがらない。ポールだけは一緒に食べに行ってもいいよと言うので、僕達は後でタクシーでホテルまで帰るから、先に行っててくれとコリンに告げる。レストランに入り、席を見つける。僕達の他には1人しか客がいない。間もなく食事のクオリティーについての会話が始まる。ポールも僕と同じくおいしい物が好きな奴で、飲み物を頼んですぐ、この店に入ったのは間違いだったと二人とも気付いたのだ。ここはレストランに失礼にならないように店を出る方法を考えなくてはと思い、ポールに携帯電話は持っているかと尋ねると、持っているとのこと。緊急の連絡が入って、急に店を出なくてはならなくなったことにしようと話し合う。ポールが携帯の電源を入れ、プラスチックの電話を相手に、架空の緊急会話を始める。残念なことに、この間レストランのスタッフは近くにいなかったため、今度は僕が自分の携帯を取り出して、同じことをくり返す。自分でもオスカー級の演技ができたと思う(「うん...うん...ええっ? そりゃ大変だ...何だって? ううん...今からちょうど食事をしようと...えっ? これからすぐ? ううん、しょうがないな...いいよ、すぐ行くから心配しないで...」等など、延々と続く)。あまりにも上手い演技だったため、僕達が店を出る頃にはレストランのスタッフはほとんど涙目で、大丈夫だといいですねえ、と心配そうにお別れを言ってくれる。飲み物はただでいいですよと言ってくれなかったのが不思議なぐらいだ。幸いなことに、笑いをジッと堪えているポールの表情には気付かなかったらしい。その後もっとずっと美味しそうな店を見つけ、素晴らしい食事をすませた僕達は、旨いワインを飲みながら、自分達のデビュー演技を思い出しては笑ったのだった。とってもいい奴、そして今はいい友達。役者としては全然ダメだけど。今のところはね。才能のある奴だから、今後どうなるかは知らないよ。
で、次はいつ演るんだい?
じゃあ頑張ってくれ。
RG
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